白目研究室

日警マニアを自称するニワカな何かが色々と書き連ねて行きます。マル機と現行日警装備中心に語りますが知識は中途半端で偏り有り。

耐刃防護衣着用は上衣の上・下論争

遅ればせながらあけましておめでとうございます。シロメです。

コロナウイルスが沈静化しないまま年を越してしまいましたね。去年の今頃は日本で感染者数が連日増加して病床満床からの医療崩壊が起こるなんて思ってもみませんでした。月並みな言葉では有りますが前線で戦う医療従事者を初め、収束や経済活動などへ日夜苦慮されているお上の方々にも頭の下がる思いです。

 

さて、タイトルの通りです。

 

以前少し触れたと思いますが

・警視庁は耐刃防護衣の上から制服・活動服(以下:上衣)を羽織ります。

→耐刃防護衣は上衣の下に着る

 

・対してその他の警察本部では一部例外を除き、多くの所で耐刃防護衣は上衣の上から着用

※大阪や埼玉は上、下マチマチ(らしい)

 

全ての都道府県警察の制式、訓令を確認した訳ではないので一様には言えませんが、着用方法まで明記されている警察本部※1,※2では、上衣の上からで統一されている感じ。一方で耐刃防護衣を着用しなさいとは言うもののどの様に着用するかまでは明記してない警察本部も有りまして、その場合取り敢えず着てれば上衣の上・下は問わない(或いは所属長判断?)と言った感じでしょうか

※1.内外着型は、原則として上衣の上に着装するものとする。(資料1)

※2.制服警察官が耐刃防護衣を着装する時は、原則として外着式とし、(資料2)

 

では何故警視庁は耐刃防護衣を上衣の下に着用するのでしょうか。

折角ポケットが沢山付いたベストを着てその中に多くの小物を入れてるだろうに、上から上衣を着てしまっては取り出しづらく無いだろうか。(確かに活動服や制服にもポケットの類いが無いわけではないですが)

実際、現行の警視庁型耐刃防護衣を導入する前の初期型耐刃防護衣(参照:https://shiromedivision.hatenablog.com/entry/2020/03/01/032247 )は活動服の上から着用していて、警視庁が最初から『耐刃防護衣は上衣の下』と言う方針を打ち出していた訳でも無さそう

 

仮説としてよく挙げられるのは"耐刃防護衣を上衣の下に着ることで見栄えがスマートになる"と言うもの。

確かに見栄えは良いですし、それを見越してか現行型は上衣の下に着用しても違和感の無い仕様(幅の狭い肩ベルト、胸元のVネック化など他警察本部と比べてミニマイズされている点)ではあります。しかし、流石に見た目の理由だけで外着型の持つ実用性を殺してしまうとは思えないんですよね

 

まぁ、首都警察の意地で見栄えも特に気にしていたんだ、とか言われれば納得してしまうのですが。或いは当時の警察官から耐刃防護衣はやっぱり上衣の下の方が(実用面で)便利だ、とか具申があったんでしょうか。

 

で、ですね。

その理由についてまず私が考えたのは、警視庁型耐刃防護衣の持つ脇部防護板という独自性。

 

コレは後々整理しようと思ってますが、警視庁だけは前部と脇部の防護衣が別々なんですよね

 

後身頃には脇部防護板を貼り付ける為にフック(チクチクするオス側)の面ファスナーが縫い付けてあって、当然脇部防護板の方はループ(フワフワするメス側)の面ファスナーになります。これはYシャツの腕まくりとかをした際に素肌に直接当たっても痛くない様にする為の仕組みだと思われます

 

フックの面ファスナーはとにかく色々な材質に引っ付いて、特にニットとかは毛玉になりかねないので注意が必要です。詳しい材質は分かりませんが、上衣も毛織物の為上から耐刃防護衣を羽織るとフックの面ファスナーで摩耗したり劣化する場合が有るのでは無いでしょうか。

だから後身頃の面ファスナーによって上衣が傷付けられるのを避けたいんじゃないかなぁ、と。

 

次に考えたのが耐刃防護衣の着用を隠す為の措置。

平成の服制で、市民に威圧感を与えない様にとの配慮から腰周りをなるべく隠せる背広型の制服が導入されたのは有名な話で、耐刃防護衣もコレに倣ったのでは無いかな、とか思ったり。

腰周りの装備ならともかく、見かけはタダのベストである耐刃防護衣を実際に市民が威圧的だと感じたかどうかは微妙ですが。

 

ただもう一点、上衣の下に耐刃防護衣を着用する事で外観上は耐刃防護衣についての様相が掴みづらく、防護されない隙間の部分を"意図的に"狙われる様な事は少なくなると思われます。そんな感じで安全上のメリットも有りそう

コッチのがリアリティと言うか、何か合点が行くような。

 

結局これらの仮説も完璧では無くてですね。2021.1.25一部改訂

①まず交通執行用耐刃防護衣※3は上衣の上から着用な点。

そうしないと反射材の意味が無くなるんで当然っちゃ当然ですが

※3.白バイ隊員や高速隊等の交通警察に携わる隊員用とは別の、前部と脇部の防護板がセパレートした物にそのまま反射材を付けた防護衣。あくまで用途から推測した便宜上の呼び名です。

 

例えば、本来隠れてしまう耐刃防護衣本体に反射材を付けなくとも、上衣の下に防護衣を着込んだ上で背負い(反射ベスト)を着ることも出来るはず。多少煩雑で動きづらいとかは有るだろうけど、わざわざ反射材付きの耐刃防護衣を別に作るコストも抑えられなくは無いな、と。

 

②次に夏服だと結局耐刃防護衣を露出させざるを得ない点。

まぁ、コレに尽きます。威圧感を排したにしろ安全上の理由にしろ、結局夏服時は上に何も羽織らないので耐刃防護衣は露出するんですよね。

 

ここら辺も踏まえた上で検討する必要があるかも知れません。

 

てな感じでグダグダ言った割に結論は出てこないんですよねぇ。どっちでもキチンと活動出来ている以上善し悪しと言うか、どっちがどうだとか言うのは悪手ではあります。(今回の議論も別に善し悪しを決める意図は無い事をご承知おきください)

現行の警視庁の在り方は勿論のこと、TBS系列ドラマの警察官みたいに警視庁が舞台なのに耐刃防護衣を上衣の上から着てるパターンも個人的には好きだったりします。(耐刃防護衣自体の精度が残念ながらあまり宜しくないですが笑)

 

ただ、蛇足でしょうがYahoo知恵袋で似たような耐刃防護衣の着方に関する質問への回答で「警視庁の方は上衣の下に着て活動性を上げる分防護面積が小さくパネルの厚みも薄くなった為他と比べて(防護)性能に劣る」という物が有りました。が、防護性能に関しては警察庁が定める基準に準拠した物を各都道府県警察本部で調達する事になっていますから、他の警察本部と比して警視庁が性能に劣ることは無いでしょう。実際、北海道警で現行警視庁型(脇部無し)を使用している(いた?)例も有ります

とは言え背面防護板が無い分、背後からの襲撃への防御といった面では劣っていると言えなくも無いのでしょうが。(警視庁は人員が多くツーマンセルが基本だから後ろを取られるなんて事は無いよね、って言う事だと思います)

 

以上となります。推測の域を出ない駄文を書き散らしただけですがお付き合い頂き有難うございました。

 

【資料】

1奈良県警服制に関する訓令:http://www.police.pref.nara.jp/cmsfiles/contents/0000000/445/1995reiki27-010.pdf

 

2福井県警服制に関する訓令:https://www.pref.fukui.lg.jp/kenkei/kemubu/keimuk/khpg/ichiran/knrei/keimu/kn1223.pdf